黒崎京子の読書ブログ

本を読む はんなりとゆるりと凛として毅然と桔梗のように清楚に

無影燈(渡辺淳一)~追悼

 

先日、渡辺淳一さんが亡くなった。

30年以上前、最初に読んだのが、無影燈だったと思う。

他の作家は、内容をすぐ忘れるが、渡辺淳一さんの作品は、タイトルを全てすぐに忘れてしまうに等しいが、内容がいつまでも心の中に行き続けている。

晩年のものは育児に明け暮れて読んでいないが、最初の頃は殆ど読破していると思う。

この作品の異様さの中に、限りない愛を見た。そして、人間の性もみた。

ぞっこん大好きになった。

日本で最初の心臓移植、和田移植のことを読みながら、正義感の中に、どれほどの優しさや倫理観等を感じ尊敬した。

暫くして、地元の大学の医学部の学園祭で、渡辺淳一の講演会をした。

聞きに行ったときも、この心臓移植を本に書いて、免職となった話を、淡々とされたことを思い出した。

このときの、学園祭の委員長を務めたのが、今の私のギネの主治医だと思う。


 

無影燈

無影燈

 

 

 

無影燈(上) (文春文庫)

無影燈(上) (文春文庫)

 

 

 

無影燈(下) (文春文庫)

無影燈(下) (文春文庫)

 

 


このとき、3名くらいだったかと思うが、渡辺淳一に握手をして貰った。
ラッキーなことに、私もして貰うことが出来た。

訃報を聞きながら、あのときの、大きくて柔らかくて、ちょっぴりごわごわした感触が思い出された。

そして、無影燈の感動と、和田移植を摘発することになった正義感を思い出しながら、今の自分の身との偶然性に、何かを感ぜずにはいられない。

渡辺淳一が子ども達を守ってくれると思っている。天から成敗してくれると思えた。

 

合掌