- 作者: 鎌田實
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2011/11/09
- メディア: 単行本
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この間、鎌田先生の癌になんとかかんとかいう講演会があったのですが、何となく躊躇して行けなかった。
児童館で、たまたま見つけたので手に取ってみました。
名前だけは、若月先生も、帚木蓬生さん同様に、存じ上げているのですが、
本を読んだことはなかったのです。
自伝のような形ですが、
鎌田先生の人柄や、長野県という地域風土から生まれ、長い間紡がれてきた人々の気質を、尊敬と畏敬の念で読ませていただきました。
そして、自分が確信していた長野を、改めて素敵な土地であり、聡明で賢く、温かい人々を再認識し、心にぽっと日が灯るような、明るい希望が灯るような感触のする本でした。
若月先生、
帚木さん、
確か、共に群馬に関係する人だったと思います。
そして、私が大学病院に勤めていた時代の、精鋭だと感じていたN科の先生も、群馬出身でありながら、佐久で開業しています。
長野の地が気に入られたようでした。
この本の中に、御柱祭というのが出てきます。
私は、このお祭りのことを、2年前に知りました。
行っている認知症の方の出身地でした。どんなお祭りか、本を見せて説明して下さり、懐かしそうに行きたいと何度も言われ、家族の方が連れて行ってくれました。
郷土の人たちの温かさを、いつも懐かしみ、知らない地でのご近所付き合いもその方の人徳で、私から見るとたくさんある方だったのですが、晩年の一人暮らしは堪えたのでしょう。
「家の前を下校する子どもたちに、お茶飲んで行かないって声かけたいんだよね。でもそんなことをしたら、不審者だって思われるよね。」
と、良く言っていました。
本当に賢くて、聡明で、ユーモアにあふれて、人に尽くす、腰の低い方でした。
そして、教え子の母親が、病に伏せっていた時に、家の暗い陽の当らない部屋にひっそりと横たえていて、居た堪れなかった話も何度も聞かされました。
貧しい中で、父親は学問がしたくて早稲田に行き、子どもたちにも高等教育を身に付けさせた事。教育の大切さと、向学心の大切さを、私はその方から教えられました。
息子さんはたくさん本を出していらっしゃいました。
その方は黙っていらっしゃいましたが、私が気がついて、聞くと、
「息子なんだよ。私には難しくて分からないんだけれど、せめて親くらいは、いつもどんなときにも子どもの味方でありたい。だから、お前の本は面白いね。良くわかる本だねって言っているんだけれどね。」
と、子育ても、褒めて育てなさいよ。と良く言っていました。
そして、歳を取っても、
「一人で頑張っているね。良くやっているね。」
って、言われたい。褒められたいものですよ。
と言っていました。
私たち親子が子育てで行き詰っていた時に、救ってくれた先生も、長野の軽井沢出身です。いまは、栃木県佐野市で開業しています。
温かい方です。
この本を読みながら、長野の素晴らしさを改めて感じていました。
また、最後に、放射能のこと、チェルノブイリのこと、福島のことも、きちんと書かれてありました。
鎌田先生に、いつかお会いしてみたいですね。